「実際リングで戦ってみて、どうだった?」
「デビュー戦ではどんな準備やトレーニングをした?」
「減量はどれくらい大変?」
「当日はどんな雰囲気なの?」
そんな疑問はありませんか?
この記事は…
これからプロデビュー戦を迎える方や、初めての試合までの流れを具体的に知りたい方に向けた、ボクシング体験記です。
ボクゼロ試合が決まってからの練習・減量・当日の緊張感までを、実際に僕が経験したリアルな目線でお伝えするよ。
- ボクシング歴11年
- 元スーパーライト級・
ウェルター級プロボクサー - ボクシングジムでのトレーナー経験あり
- トレーナー資格保有(NSCA-CPT)


デビュー戦体験記を読む前に知ってほしいこと


ボクシングのプロデビュー戦は選手にとって特別な意味を持っています。
これから始まる競技人生の行く末を左右するのはもちろんのこと、
・初めての減量
・初めてリングに上がり、ヘッドギア無しでパンチの交換をする
・初めてチケットを買ってもらい、その応援者の前で試合をする
など、これまでの人生で体験したことのない、否、普通の人生では体験することのない初めての衝撃をたくさん体験することになります。
SNSやネットニュースでは「1RラウンドKO!」「圧倒的な内容で勝利」「無傷での圧勝劇」など派手な場面だけを切り取っていますが、実際のボクサー…超一流から4回戦ボーイまで等しく、地味な反復練習や体調管理を毎日行っています。
試合までの期間を通して自分と向き合い、勝たなければいけないのです。
これからプロの世界に挑戦したり、デビュー戦を控えている方が「自分だけが不安を感じているのではない」と思ってもらえるように、僕の実体験をわかりやすくお伝えしていこうと思います。
デビュー戦が決まってから試合当日まで|プロテストの因縁


それまでは漠然と強くなりたいという気持ちでジムワークをこなす毎日から、
試合日というリミットが出来た瞬間から、生活のすべてが“勝つ”という目的に向かって動いていく感覚になります。
現在の体重から試合の前日計量までに、あと何キロ落とさなければいけないか。
今の自分が試合までにどれだけスタミナ・技術力を向上させられるか。
デビュー戦が決まると、生活の優先順位が試合第一に急変します。
試合決定直後に整えたこと|生活習慣と練習メニュー
生活習慣
計量日まであと何日あるかを確認し、毎日朝・夜定時に体重計に乗って記録をつけます。
暴飲暴食はもちろんのこと、間食をやめます。
練習メニュー
トレーナー・会長と話し合い、ミットやスパーリングの回数を増やします。
僕の場合
スパーリング 計量日の2週間前まで
ジムワーク 計量日の1週間前まで
消化するラウンド数や強度を増やします。
スパーリングの相手は、当時1階級上の先輩や、
ジムの看板選手…僕の憧れの日本ランカーがスパーリング相手をつとめてくれて、
技術的にも強化されたし、何より大きな自信になりました。
また、全体のジムワークの時間も増やして、
シャドーボクシング・サンドバッグ・筋力トレーニングのラウンド数や強度を上げ、自らを追い込んでいきます。
自主練習では、ロードワークの時間を増やします。
特に、試合1ヶ月前くらいまではダッシュの頻度を増やして、
ラウンド中手を出し続けるスタミナの強化を図ります。
デビュー戦は3ヶ月前のプロテストの相手|因縁
僕はプロテスト時の選手がそのままデビュー戦の相手となりました。
プロテスト体験記は別記事でまとめています


一般的なデビュー戦では、相手の詳細な情報などは手に入らないことが多いのですが、
僕の場合は一度手合わせした相手との試合になります。
プロテスト時にボコボコにされた因縁の相手。
僕は密かに闘志をメラメラと燃やしていました。



絶対に、リベンジしてやる…!
減量とコンディション調整で気をつけたこと|仕事とのバランス
ボクシングのデビュー戦で多くの人が苦しみ、失敗しがちなのが試合までのコンディション調整です。
いかにその階級の体重をつくりあげても、
本番の試合で動けず、練習の成果を出せないならそれは減量失敗になります。
減量に関しては別記事でもまとめています


初めての減量|適正階級を意識する
当時の僕の場合、普段の体重は73kg前後でした。
そこからウェルター級のリミット66.68kgまで体重を落とすので、
減量幅は約6.3kgです。
ジムワークの量と強度が上がり、自主練のロードワークも量を増やしたので徐々に無駄な脂肪が落ちていき、
自然と体はシャープに絞れていきました。
また、間食をカットしたのもかなり大きかったです。
残り1ヶ月を切ると、1日の食事を2食に落とします。
食事内容も、脂質は抑えて、鶏胸肉や野菜を多く食べていました。
試合の前日軽量まであと1週間の時点で、あと2kgという状態で、なおかつ体もしっかり動く状態でした。
スパーリングやハードトレーニングの疲労は残っているので、
残り1週間は疲労回復に当てられ、軽いスパーリングのみ行っていました。
ロードワークは、最後の1週間は軽いジョギング程度を行いました。
最後の調整はガムを噛んで唾を吐き続けます。(これで500gくらい落ちます)
2戦目以降、スーパーライト級(63.50kgリミット)に階級を落とすのですが、一気に減量がキツくなり、コンディション調整が難しくなりました。
僕の減量失敗の地獄は、2戦目以降に巻き起こります。
普段から自分の一番動ける体重、適正階級を把握しておくことは凄く重要です。



今思えば、僕のベストの階級はウェルター級だった…。
仕事とのバランス|良い職場との出会い
プロ選手と言ってもプロボクサーの場合、ボクシングだけで生活している人はトップ中のトップの選手たちだけです。
ですので誰もが仕事をしながら、練習時間を確保して、減量中も働いて、試合にのぞむ形になります。
僕の仕事は当時、高齢者運動施設に勤務していました。
試合前の1ヶ月前の仕事は本当にキツくて、ハードトレーニングや減量の影響もあって仕事中に何度もめまいで倒れそうになりました。
ただ、僕は本当に幸運で、職場の皆さんが応援してくれてチケットをたくさん買ってくれたり、
応援旗を作ってくれたりしてくれて、試合の前後に仕事はお休みにしてくれたりと…
職場の皆さんには強力にバックアップしてもらいました。
また、そんな恩を受けた皆さんに“勝利”で恩返ししようと強力なモチベーションにも繋がりました。
真剣に、頑張る人間には
真剣に、応援してくれる人間が現れる
僕は身をもってそのことを実感しました。



ボクシングの才能が無かった僕が、勝利を重ねることが出来たのは応援してくれた皆のおかげ。それだけは間違いない。
前日計量〜試合当日の流れ|体験記


いよいよ計量日
前日計量の日、計量はJBC(ボクシングコミッション)の事務所で午後3時に行われます。
唾吐きで体重をリミットまで合わせた僕はジムに向かいます。
ジムで一度計量器に乗って、体重を確認します。50gほどのアンダーでした。
なぜアンダーまで落とすのか、と会長に怒られましたが、
もし落ちなかったらと考えると…恐怖でアンダーまで落としてしまうのは僕だけではないはずです。
同じジムから出場する選手もいます。
ゆっくりゆっくりと歩くその姿は、さながら幽霊。
その選手は完全に減量に失敗しています。
計量を無事100gアンダーで通過した僕は、
常温のスポーツドリンクをゆっくり飲みました。(冷たいものは避けた方が良い)
朝から舌を潤す程度の水しか飲んでいなかったので、この世のものとは思えないほどの美味しさを感じます。
さっきの幽霊みたいな同ジムの選手は、持参した菓子パンにかぶりついていました。
他にも多数のボクサーが膝をついて食べ物にかぶりついていたのが記憶に強く残っています…。



“食べ物に飢えた人間”を見た気がする。すごい光景だった…。
ここから試合までの間は、自由に何を食べても良いのですが、
リカバリーといって体を戦える状態まで回復させる大切な期間になります。
ここで食欲に任せて暴飲暴食すると、試合に向けた準備・練習も含めてすべてが水の泡となります。
リカバリーに関して別記事でも深掘りしてます


今回僕は6kgほどの減量だったので、余裕を持ってリカバリーをすることが出来ました。
体も良く動き、体調は万全の状態で、本番当日を迎えることになりました。
減量の大失敗は、次の試合以降起き続けます。
試合当日
因縁の対戦相手とのプロテスト記事


一睡も出来なかった試合前日の夜
前日の夜はいろんなイメージが頭の中を駆け巡り、まったく寝ることは出来ませんでした。
1週間前から、試合で勝つ夢と惨敗する夢を交互に3回以上はみました。
試合当日の朝、緊張した体をほぐそうと近所の公園を軽くシャドーしながら、散歩します。
何をしても、気は紛らわせることはできません。
不安の波がいくつもいくつも押し寄せてきます。
試合会場入り、選手控え室へ
試合会場に到着しました。
デビュー戦の僕は4回戦。序盤に出番が回ってきます。
出場選手の控え室に入ります。
全選手合同ですので、他ジムの人やら関係者やらでごった返しています。
試合用トランクス・シューズを身につけます。
マウスピースや試合で使うタオルも確認しておきます。
動ける格好になったら、ウォーミングアップも兼ねてリングチェックにいきます。
実際にリングに上がって、広さ、フロアマットの硬さ、ロープの張りを確認します。
意外と実際のリングは広いな…フロアマットも意外と柔らかい。
控え室に戻ってバンテージを巻きます。
トレーナーと椅子に座って向かい合って、巻いてもらいます。
ガチガチに何重にもテープを巻き込んで拳を固めます。
万が一にもケガのないように、手首から手の甲までしっかりと巻きます。
もう、逃げられない。
そう感じたのを15年以上経った今でも覚えています。
その後、JBCの控え室に行き、バンテージのチェックをしてもらい、サインを貰いました。
いよいよ順番が近づき、
10オンスグローブを装着してもらいました。
トレーナーのミット目掛けてウォーミングアップをします。
後は、リングに上がるだけ…。
緊張を払うように、自分の顔面をグローブで叩きます。
初めてのリング、恐怖、緊張。
応援に来てくれている皆のため。
今日のために激しい練習に耐えた自分のため。
「絶対に、負けられない」
この日のために、僕はひとつの武器を磨いてきました。
カウンターの、右フック。
プロテストでもそうだったように、対戦相手の彼はまた、
きっとグローブタッチを振り払って打ち込んでくる。
そんな確信がありました。
ならばそのパンチに右フックをカウンターで叩き込む。
この一発に、すべてをかける。
開始10秒で、試合を終わらせてみせる。
そんな無謀な作戦を密かに僕はたくらんでいました。
馬鹿の一つ覚えのように、
来る日も来る日もシャドーで反復し、ミットに打ち込み、サンドバッグに打ち込みました。
才能も、経験もない僕は、これだけを磨き抜こうと決めました。
プロデビュー戦のリングへ
セコンドには信頼するトレーナーと、
僕の憧れの日本ランカーがついてくれています。
ものすごく心強い。
僕の選んだ入場曲、ロッキー3のテーマ曲「Eye of the Tiger」が会場に流れて、
リングにゆっくり上がります。
乾いたゴングの音が鳴り響きます。
ゆっくりと因縁の相手が近づいてきます。
グローブタッチで僕が手を差し出そうとすると…
即座にパンチを僕の顔面目掛けて打ち込んできました。
かかった。
瞬間、僕は体を沈み込ませて相手のパンチを外しつつ、
右フックを相手のこめかみにぶち込みました。
相手の顔面が吹き飛びます。
でも、浅かった。緊張で腰がひけていた。
作戦失敗。
やばい、どうしよう…この後のことを何も考えていなかった。
恐怖で慌てながら、相手のパンチをガードで防いだり、
とにかく手を出さねばとやみくもにパンチを振るっていると、1ラウンドが終了していました。
インターバル中、トレーナーが檄を飛ばします。
「怖がってるのか!?下を向くな!」
「いいか?練習でランカーたちとスパーしただろ?冷静になって思い出せ!」
後ろからは憧れのランカーその人が、僕の後頭部に氷嚢を当ててくれます。
「大丈夫、いいぞ、いいぞ。」
2ラウンド|冷静に、脱力することの大切さ
2ラウンド。
セコンドから勇気をもらった僕は相手に駆け寄り、コンビネーションで襲いかかります。
しかしガードで防がれて、相手の反撃が待っていました。
左右のフックを猛然と振るって突進してきます。
怒号にも近い歓声が飛び交う中、
不思議なことに、憧れの日本ランカーの声だけが僕の耳に届きました。
「落ち着け!パンチ見えてるぞ!」
その瞬間、全身の体の無駄な力が抜けて、
相手の右ストレートを僕の体はかわし、
練習したカウンターの右フックが相手の顔面にめり込んでいました。
相手は突進してきていたので、勢いもプラスしてカウンターとなります。
そのまま、前のめりにダウンしました。
相手は立ちあがろうとしていますが、
倒れ方がまずかった、レフェリーストップとなりました。
2ラウンドTKO勝ち。
リングに注がれる眩しいライト。
割れんばかりの観客の声援。
今までの激烈な練習の苦労が今、一瞬にして喜びと感動に変わりました。
勝利後のリングは天国そのものでした。
僕は人生でこれ以上の感動を経験したことがありません。
セコンドの皆にグローブタッチしに行きました。
「やりました!」
皆、笑顔で喜んでくれている。
応援に来てくれた皆さんとも喜びを分かち合います。
あなた方のおかげで、勝つことが出来ました。
心から感謝を伝えました。
こうして、最高の形で僕のデビュー戦は終わりました。
試合中に痛みはなかったのですが、試合後何か周りの音が聞こえづらいと思っていたら、
片耳の鼓膜が破裂していました。



試合後シャワー浴びる時、めちゃくちゃ痛かった。
まとめ|プロデビュー戦後に得た学び|試合の振り返りとアドバイス


プロデビュー戦を終えて、大切なことは何だったかと思い返すと…
試合前の段階
・緊張するのは当たり前。やるべきことを淡々と進めること
・勝たなければいけない、という考えにとらわれないこと
・今の瞬間を楽しむ心を少しでも持つこと
試合開始後
・試合前のスパーリングの動きを思い出すこと
・頭で色々考えずに、脱力(リラックス)すること
・ゴングがなったら、ひとつひとつスパーの動きを実行していくこと
試合を始める前は、ボクシングは個人競技だ、自分さえ強ければ良いのだと信じていましたが、
試合に至るまでの周囲の協力・試合中の周りの応援というものは、
想像していた以上に力になりました。
試合最中にも、かなり周りの応援は聞こえます。そして、力になります。
これがなければ勝つことは出来なかったと断言できます。
ですのでボクシングは自分ひとりでやっているのではない、
と常日頃から意識し、周囲への感謝を常に頭においておくことがベストであり、
結果にも直結すると僕は信じています。
この記事を読んで、少しでもボクシングの世界に興味を持ってくれたり、
ボクシングを始めてみようと感じてくれたりしたら幸いです。
ボクシングを始める第一歩、
ジム選びについても記事を書いています


ボクシングに必要な道具についての記事です


本日は以上になります。
ここまでお読みいただいて本当にありがとうございます。
また、次の記事でお会いしましょう!




